奇跡のリンゴを超えた??奇跡の麦の話 無農薬に挑戦したある研究者の闘いの日々
農薬を使わない、奇跡のリンゴは本当に感動的ですよね。
実は意外と知られていない、奇跡の麦の話があるのです。
周囲の反対に合いながらも、奇跡の麦を生み出す迄のストーリーを紹介します。
麦の栽培が始まったのは、1万5000年前とも言われます。
最初、麦は麦穂の状態になると、風に飛ばされ易く、栽培が困難な作物でした。
長い品種淘汰の中で、麦穂が風で飛ばされなくなった時、麦は人類にとって最も重要な作物の一つとなったのです。
だからこそ、麦を安定して生産することは、農業のテーマの一つでした。
やがて、農業の近代化により、麦が大量に、安定的に作られるようになり、人口が飛躍的に増加しました。
ところが、大きな問題が発生したのです。
農薬問題です。
農薬による健康被害を訴える人が増え、農薬を使わない、安全な食物生産を望む声が高まりました。
しかし、農薬の散布を行わないと、害虫が大量発生します。
広大な麦畑を、農薬を使わず人間の手で管理するのは不可能です。
そんな時、一人の研究者が、立ち上がりました。
害虫に強い、麦を作ろう。
生物の持つ力を信じ、害虫を寄せ付けない麦を作ろうと。
そうすれば、農薬を減らす、いや、完全無農薬の麦すら可能になり、農薬のコストもかかりません。
それは消費者にも、農家にもメリットがある夢の麦なのです。
くる日もくる日も研究に没頭し、品種改良を繰り返しました。
周囲は、反対します。
そんな麦はできるはずがない、妄想に過ぎないと。
農薬が必要ない植物は不自然だと。
研究は何度も、何度も失敗しました。
しかし、研究者は決して諦めませんでした。
とうとう、その日はやってきたのです。
ある日、実験していた農場で、変化に気付きました。
虫が、麦を悩ませていた害虫が、全くいなくなったのです。
研究者は、麦畑を隅から隅まで走り回り、一匹も見つからないことを確認し、
静かに涙を流しました。
麦畑には、麦穂を揺らす風の音だけが、聞こえていました。
いかがでしょうか?
この農薬を使わない奇跡の麦を食べてみたいと思いませんか?
・・・残念ながら、このストーリーはフィクションです。
でも、虫を寄せ付けない、奇跡?の作物は存在します。
それは、悪名高き、遺伝子組み換え作物のことなのです。
アメリカでは、麦では遺伝子組み換え作物の商用化は許可されていませんので、奇跡の麦は存在しません。
しかし、遺伝子組み換え技術で品種改良された、微生物由来のBt毒素などを持つ、大豆、トウモロコシは大量に生産されています。
アメリカの大豆はほぼ100%、トウモロコシ70%が遺伝子組み換え作物となっているのです。
現在の日本では、遺伝子組み換え作物は厳しく制限されていますが、家畜の飼料として大量に輸入されている為、無関係ではありません。
Bt毒素は、虫には有害ですが、人間には無害とされています。
ですが、虫が死ぬ作物を、人間が食べ続けて問題がないのでしょうか?
今の国産の農作物は、厳しい基準に従って農薬が使用されていますので、安全性が高くなっています。
日本で規制されている遺伝子組み換え作物と、日本で許可されている農薬どちらが安全だと思いますか?
奇跡のリンゴを育てた木村さんの努力は、称賛されるべきものですが、安易に奇跡という言葉を鵜呑みにするのは危険です。
奇跡の麦を食べたいと思った方は、無農薬、有機栽培という言葉に踊らされないようにしてくださいね。
厚生労働省:遺伝子組み換え食品
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/index.html